障害者雇用における離職率と、職場定着率向上のポイントとは? | ESJコンサルティング

障害者雇用における離職率と、職場定着率向上のポイントとは?

  1. 目次
  2. 1.障害者雇用における離職率・定着率の実状
  3. ①業種別の定着率
  4. ②障害の種類別の離職率
  5. 2.障害者雇用における離職理由
  6. 3.障害者の企業側に求める改善点
  7. 4.離職率を下げる、定着率を上げるために必要なポイント
  8. ①コミュニケーション
  9. ②支援機関との連携
  10. ③ひとくくりに「障がい者」と対応をしない
  11. 5.まとめ

障害者雇用における離職率は一般就労枠に比べ、その率は高くなっています。

そのため、企業としては何とか障がい者の定着率を向上しようと試行錯誤をしています。

障害者雇用における法定雇用率の達成には、離職率を下げ定着率を上げることが重要となります。

この記事では障害者雇用における離職の実状やその理由、企業側が対応すべきことを紹介します。

1.障害者雇用における離職率・定着率の実状

障害者雇用における離職率と定着率は表裏一体の関係です。

ここでは、障害者雇用の離職率・定着率を、業種別・障害の種類別から見ていきます。

①業種別の定着率

厚生労働省の調査によると、「医療・福祉」「生活関連サービス・娯楽業」が高く、3か月では約80%前後、1年では約60%強の定着率となっています。

全業種の平均が3か月で76.5%、1年で58.4%なので、求職者の皆さんは、就職希望先の業種がこの平均値を上回っているかを一つの判断材料とすることができます。

ちなみに「農林・林業」「建設業」「公務」「サービス業」「製造業」などの一部の業界で離職率が高い傾向にあり、これからの業界は定着率が50%を下回っています。

※出典:「障害者雇用の現状等」より「図表1-3-15 就職先企業の産業別にみた職場定着率の推移と構成割合」(2017年、厚生労働省)

②障害の種類別の離職率

A.就職後3ヶ月時点の定着率

身体障害 77.8%、知的障害 85.3%、精神障害 69.9%、発達障害 84.7%

B.就職後1年時点の定着率

身体障害 60.8%、知的障害 68.0%、精神障害 49.3%、発達障害 71.5%

※出典:「障害者の就業状況等に関する調査研究」より「グラフ 障害者の職場定着率(障害種類別)」 (2017年、高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED))

 

知的障害と発達障害の方に比べ、身体障害と精神障害の方の定着率は悪く、精神障害に関しては1年後には半数以上が離職していることが分かります。

ただし、このような結果になった理由として、この集計には一般就労枠と障害者雇用枠の両方が含まれていることが原因として挙げられます。

知的障害と発達障害の約80%が障害者雇用枠で採用されているのに対し、身体障害の36.5%、精神障害の32.6%が一般就労枠で採用されています。

この一般就労枠採用の障がい者の離職率が、障害者雇用枠採用の障がい者に比べ、非常に高い割合となっているのです。

これらの方々は職場の人に障がい者と認識されておらず、障害への配慮が足りていないない職場であった可能性があげられます。

逆に返せば、知的障害や発達障害は、採用時点で障害者であると企業側に認識されていることの影響が大きいとも考えられます。

実際、障害者求人のみでの定着率は以下の通りです。

 

A.就職後3ヶ月時点の定着率

身体障害 86.8%、知的障害 91.2%、精神障害 82.7%、発達障害 92%

B.就職後1年時点の定着率

身体障害 70.4%、知的障害 75.1%、精神障害 64.2%、発達障害 79.5%

 

この場合、先に示した結果に比べて比較的安定した定着率と言えます。

※出典:「障害者の就業状況等に関する調査研究」より「グラフ 障害者の職場定着率(障害種類別)」 (2017年、高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED))

2.障害者雇用における離職理由

こちらも厚生労働省が調査を行っており、障害者雇用における離職理由として、次のような点が多く挙げられました。

1・職場の雰囲気・人間関係(身体29.4%・精神33.8%)

2・賃金・労働条件が合わない(身体32.0%・精神29.7%)

3・仕事内容が合わない(身体24.8%・精神24.8%)

4・疲れやすく体力意欲が続かなかった(精神28.4%)

5・症状が悪化(再発)した(精神25.7%)

6・作業、能率面で適応できなかった(精神25.7%)

ここで特徴的なことは、身体障害と精神障害に共通して見られた1~3の離職理由は、一般就労枠の離職理由でも多く見られる理由です。

一方、4~6の離職理由は精神障害のみで見られた特有のものであることが分かります。

※出典:「平成25年度障害者雇用実態調査」(2013年、厚生労働省)

※この調査では、身体障害、精神障害が対象になっているため、知的障害は含まれていません。
また障害者雇用促進法に基づき、発達障害は精神障害としてカウントしていると推測されます。

3.障害者の企業側に求める改善点

「2.障害者雇用における離職理由」で紹介した、厚生労働省の同じ調査で、「仕事を続ける上でどのような改善があったら仕事を続けることができたのか」という項目で、次のような点が多く挙げられました。

・能力に応じた評価、昇進・昇格(身体28.0%・精神31.2%)

・調子の悪いときに休みを取りやすくする(身体19.6%・精神23.1%)

・コミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置(身体18.0%・精神20.4%)

・能力が発揮できる仕事への配置(身体17.5%・精神18.8%)

・上司や専門職員などによる定期的な相談(精神15.8%)

・短時間勤務など労働時間の配慮(精神14.6%)

ここで特徴的なことは、障がい者特有の改善点と一般就労枠の離職理由でも多く言われる改善点の両方が、障がい者が企業側に求める改善点として挙げられたことです。

この結果から、企業は障がい者が、障害があるが故に求める改善点を直していくだけでは足らず、一般的に求められている改善点をおろそかにしてはいけないということが分かります。

 

※出典:「平成25年度障害者雇用実態調査」(2013年、厚生労働省)
※この調査では、身体障害、精神障害が対象になっているため、知的障害は含まれていません。また障害者雇用促進法に基づき、発達障害は精神障害としてカウントしていると推測されます。

4.離職率を下げる、定着率を上げるために必要なポイント

これまでは厚生労働省の調査結果から読み取れる、障害者雇用における離職理由とその改善点を見てきました。

それではこれらを解決するために、障がい者自身は、そして企業側はどのようなことが必要なのでしょうか。

①コミュニケーション

ここまでご覧いただき、離職理由のトップ近くには「職場の雰囲気・人間関係」が挙げられていることから、コミュニケーションの重要性というのが分かるかと思います。

障がい者も企業も、一方的に求めるだけ、強制するのではなく、コミュニケーションを取りあうことで、お互いに現状を理解し合い、歩み寄っていくことが何よりも大事です。

企業側には加えて、相手の抱える障害によっては必要なコミュニケーションにおける配慮を忘れないようにしてほしいと思います。

②支援機関との連携

障がい者と企業の間だけで解決しない事柄もあるでしょう。

そういった時には第三者的な支援をしてくれる様々な機関が設置されています。支援機関のサポートは、障がい者も企業も双方にとって役に立つものです。

・ハローワーク

障害者雇用における中心的な公的機関です。

一般的には求職者が仕事を探しに行くための機関と思われがちですが、求人票を出すだけではなく、企業の求める人材やスキル、その他障害者雇用におけるあれこれを、採用後の定着まで相談することが出来ます。

・障害者職業センター

障害者職業カウンセラーや、職場適応援助者(ジョブコーチ)などが配置されており、ハローワークと密接な連携を取って、障がい者の就労のサポートや企業への相談・援助を行っています。

・障害者就業・生活支援センター

就労支援員と生活支援員が配置されており、就業とそれにともなう仕事と日常生活の両方の相談支援を実施しています。

障がい者にとっては就労・生活面全般においての相談機関ですが、企業としては障がい者の職場定着等に関して事業所の相談支援も行ないます。

・就労移行支援事業所

障がい者の就活サポートを行う機関で、職業訓練や面接対策なども実施しています。

また、就職した障がい者がその企業に定着できるよう、採用後も相談にのったり、事業所を訪問するといった定着支援まで行います。

③ひとくくりに「障がい者」と対応をしない

障がい者を「障がい者」として一括りにするのではなく、一社員として扱われなければならないということです。

これは障がい者側にも言えることで、個人としての要望を全て叶えてほしいと企業側に頼み込むのではなく、互いに歩み寄ることが必要です。

障がい者が求めること、企業が求めること、お互いに十分な気遣いや支援があれば、それは離職率の低下、定着率の向上につながっていきます。

5.まとめ

障害者雇用における離職率や離職理由、改善点やそのポイントなどについて紹介してきました。

離職率や離職理由には、業種や障害の種類によって特徴があること。

そして離職率を下げ、定着率を上げるためには、障害者と企業の双方が、なぜ一般就労枠に比べ障害者雇用の離職が多いのか。

様々な調査から分析し、相互に理解し合うが必要であることが分かっていただけたかと思います。

高い職場定着率、まずはコミュニケーションの活性化など職場環境を整えることから始めてみましょう。


ESJコンサルティングでは企業の障害者雇用に関わる全般サポートを行っております。

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