いわゆる障害者雇用ビジネスについて | ESJコンサルティング

いわゆる障害者雇用ビジネスについて

  1. 目次
  2. 「障がい者雇用”代行”ビジネス」はどうして急に注目されたのか?
  3. 令和元年には、厚生労働省が障がい者雇用サービスに関する見解を示している
  4. 令和5年時点の「障がい者雇用ビジネス」に関する国の見解や方針について
  5. 障がい者雇用支援サービスを導入する際のポイントについて
  6. 法定雇用率の達成だけを目的とされていませんか?
  7. 本当に業務切り出しはできませんか?
  8. 障がいがあると、難しい仕事は任せられないと思われていませんか?
  9. ESJの代表の所感・アイデア
  10. 農園型について
  11. 障がい者雇用でカフェ運営を行うというアイデア
  12. 最後に
ESJメディアをご覧頂きありがとうございます。 代表の宇田川です。 皆様は、2023年1月の障がい者雇用支援ビジネスに関する報道をご存知でしょうか。 その報道では、ある特定の障がい者雇用支援サービスを「障がい者雇用”代行”ビジネス」として取り上げ、国もこれを問題視しているという内容でした。 私も障がい者の方に関わる仕事をしている関係上、この報道を無視することはできません。 企業のご担当者様の意見や、世間の視点、そして国の方針をしっかりと理解し、それらをまとめることが重要だと考えております。 今回の記事では、巷にある障がい者雇用支援ビジネスに関して、弊社でお客様からヒアリングをした結果得たお考えや、労働政策審議会等での実際の発信内容に加え、私の所感をお伝えできればと思います。 今後の障がい者雇用のトレンドを把握し、それを貴社の障がい者雇用推進の判断材料としてご活用頂ければ幸いです。 本日もよろしくお願い致します。

「障がい者雇用”代行”ビジネス」はどうして急に注目されたのか?

障がい者雇用を支援するビジネスはいくつかございます。 障がい者の方の人材紹介サービス、障がい者の雇用のための定着支援コンサルティングサービス等は、一般就労を目指す障がい者の方をサポートするサービスとなっております。 その他には、農園型障がい者雇用サービスやサテライトオフィス型というものがあります。 これらは、一般就労が難しい方でも採用し、働き口を広げたいと考える企業様が利用されるものです。 農園型障がい者雇用サービスは、サービス提供会社が企業に農園を貸出し、その農園で働いてもらうための障がい者の採用やその後の業務指導、定着や管理を代行してもらうサービスになっております。 サテライトオフィス型は、指定したオフィスに出勤してもらい、そこで軽作業(記事の執筆やデータ入力等)を行ってもらう一方、契約した企業に業務指導や雇用管理を委託できるサービスです。 上記のような障がい者雇用サービスは、時折「雇用代行ビジネス」と称されることもあります。 その背後にあるロジックとしては、本業と全く関係のない業務や企業利益に直結しない業務を切り出して、その管理や指導を外部に委任することから、「雇用率を買っている」「代行」という風に表現されていると考えられます。 前述した表現は、一方的な見解を押し付ける、いわばレッテル貼りのようなものです。 それが多少なりともセンセーショナルに取り上げられ、問題提起をするために報道へと至ったのではないでしょうか。 このような指摘は2020年代頃からあり、障がい者雇用支援サービスに関して否定的な意見はありました。 今回”炎上”のようになった背景としては、報道内容の中に「国が動いた」ような記載があったことが重要だったと考えられます。 もし国が規制に動くと、〇〇型障がい者雇用ビジネスが成り立たなくなり、利用中の企業が抱えている障がい者の雇用に影響が出る可能性があります。そのため、今回大きな注目を集めた一因だと考えられます。 今回の報道では「国が動いた」という表現が使われていましたが、果たして本当に国は動いていたのでしょうか?

令和元年には、厚生労働省が障がい者雇用サービスに関する見解を示している

国がどのタイミングで障がい者雇用サービスに関して見解を示したり、討論をしていたかというと、例えば令和元年5月10日には討論が行われており、その時点での厚生労働省の見解が示されておりました。 議論の中で、以下原文のNO139で質問が提出され、厚生労働省の担当者がそれに対する回答を行いました。 質問:もっと厳しい言い方だと、これは雇用率を企業が買っているという仕組みじゃないかという声もあるんです。 回答: ・多様化する障がい特性に対応して、多様な場が確保されるということが重要 ・適正な雇用管理を行うこと ・障がい者にとってその能力、適性を十分に発揮する、障害のない方々とともに生きがいをもって働ける職場づくりを進めて頂くことが必要 原文に関しては、以下の議事録からご覧いただくことが可能です。 第198回国会 衆議院 厚生労働委員会 第16号 令和元年5月10日 139~143 https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=119804260X01620190510&current=5

令和5年時点の「障がい者雇用ビジネス」に関する国の見解や方針について

現状、具体的な対応策について議論が行われたという情報は私の手元には届いておりません。 しかし、令和5年4月17日(月)の労働政策審議会障害者雇用分科会にて、障害者雇用支援サービスに関する取り組みについて報告がありました。 障害者雇用支援サービスについて「把握した事例」を公開し、それに対して「望ましい取組のポイント」を提示することで、 企業が障害者雇用支援サービスの利用にあたっての注意点を示しております。 障害者雇用サービスは企業と働く障がい者からのニーズがあり、国も現状を理解しております。 法定雇用率上昇の決定からも分かる通り、国は障がい者雇用の推進を企業に進めてほしいという意図があります。 そのため、障害者雇用支援サービスの利用指針が公開されたと解釈できます。 障害者雇用支援サービスを利用する企業様は、「望ましい取り組みポイント」を把握し、障害者雇用支援サービスを利用することが必要です。 詳細な情報については以下のリンクよりご覧ください。 第128回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32656.html  

障がい者雇用支援サービスを導入する際のポイントについて

企業からのニーズもあり、国もこういった「障がい者雇用ビジネス」に一定の理解を示している状況です。 そのため、今後農園型障がい者雇用サービスや、サテライトオフィス型の障がい者雇用サービスの導入を進めても問題ないでしょう。 私自身も、企業の立場や考え、状況次第で選ぶことのできる選択肢は多いほうが良いと考えております。 しかし、軽率に選択すると、後になって後悔するだけでなく、担当者の責任問題にも発展する可能性があります。 障がい者雇用の担当者様は以下のことを考えながら障がい者雇用サービスの導入を検討されるべきかと存じます。

法定雇用率の達成だけを目的とされていませんか?

法定雇用率をお金で買えることを全面に押し出して営業活動をしている業者も一部存在します。 た、無期転換ルールを避けるためにスタッフをローテーションさせるという、悪質な提案を行う業者も存在するとの報告があります。 このような業者を利用する場合は、本当に法定雇用率を買うと言われても致し方ないでしょう。

本当に業務切り出しはできませんか?

障がい者雇用ができない根本的な理由は、業務切り出しができないと思っている、社内に障がい者雇用に通じた人がいないからです。 そのため、障がい者に割り当てられる業務が思いつかないと、すぐに諦めてしまう傾向があります。 まずは社内で人手が足りていないと感じている部門から業務切り出しができないか考えて頂き、現場の方にアンケートを実施する等してみたください。 最初は業務切り出しは非常に大変だと存じます。しかし、各部署や部門とのやりとりをする中で、社内の障がい者雇用の意識が浸透し、将来的な企業の財産になります。 この難しい問題を解決するために、投資と捉えて障がい者雇用のコンサルティングサービスを導入するという選択も有効なアプローチかと思います。 コンサルティングサービスを受けることで、切り出した業務量が適切なのか、どのくらいの障害特性の方なら業務に従事できるかアドバイスを受けることができるので、ノウハウが無くても障がい者雇用を進めることができます。

障がいがあると、難しい仕事は任せられないと思われていませんか?

障がいがあったとしても、問題なく仕事ができる方は非常に多いです。 就業に意欲的で、就労移行支援所で学習を積んだ方々も、戦力として考慮すべき存在として市場に多く存在しています。 弊社は多くの就労移行支援所と連携をしており、通所されている方と面談をする機会も多いのですが、「ここまでできるのか!」という驚きの瞬間も少なくありません。 障害に対する配慮や、適切な職務への配置を行いさえすれば、  

ESJの代表の所感・アイデア

農園型について

私自身は貸し農園ビジネスを、地域貢献のためや障がい者の方の新しい働き口の提供として適切に運営するのであれば全く問題ないと考えております。 私も多くの企業担当者様にお話を聞かせて頂いておりますが、多くの企業が地域の活性化に貢献しながら障がい者の方々の働き口を増やしたいという狙いや目的を持って貸し農園型を利用されているということです。 しっかりと事業として運営をし、国が求めるような農福連携を実現しようとしている企業様もいらっしゃいます。 地域貢献のために働き口を増やし、農園のスタッフの方は地域のスーパーやレストランで提供するための野菜を作り販売する。そして、企業利益のために創意工夫を行う。これは事業活動として認められるべきであり、批判される理由も無いのではないでしょうか。 ただし、仕事とみなすために野菜を作らせて、それを何も活用しない、ましてや捨てるようなことをしているならば、理想とする農福連携ではないため改善されていくべきでしょう。

障がい者雇用でカフェ運営を行うというアイデア

とはいえ、〇〇型障がい者雇用に対して拒否感や嫌悪感を持つ方もいるため、今後はより多くの選択肢を考えていくべきだと考えています。 その中で、私は障がい者雇用でカフェ運営をするのはどうか?というのを考えております。 この着想を得たのは、オリィ研究所が運営する分身ロボットカフェを以前利用したことがきっかけです。分身ロボットカフェでは、難病患者や重度障害者の方々が、ロボットを遠隔操作しお客様にサービス提供を行っております。 サービスを受けていて、凄く最先端な取り組みであるため、一般的に広く普及するにはまだまだ時間がかかるだろうなと感じました。 それと同時に、そもそも機械やDX等の最新機器を使わなくても、単純にカフェ運営を障がい者の方とするのも1つのアイデアとして面白いなと思いました。 調べてみると、ある企業様は障がい者の方の働き口を確保するためにカフェ運営を始めており、会社の福利厚生とカフェ運営での収益化を目指しているとのことです。 普通にカフェ運営するのでもいいと思うのですが、私が考えているのは、例えば大きな工場や物流センター内にカフェスペースを併設し、そこでの作業を障がいのある方に任せるのはどうだろうか?というものです。 食堂の運営まで拡大すると設備投資の負担が大きくなる可能性が高いですが、簡単な食品加工やドリンクの準備なら障がい特性の考慮事項のハードルも比較的下げることができます。 自社内工場や倉庫なら比較的広いスペースを確保もしやすく、オリィ研究所が開発したような分身ロボットの導入も比較的容易でしょう。 また空いてる時間や繁忙期には物流センターの軽作業もして頂くことができ、障がいがあっても最大限活躍して頂く機会を得ることができると考えています。 こういうアイデア出しをしていき、多くの人が考えて実践していくことで、また新しい障がい者雇用のカタチの創出も可能だと考えております。 機会があれば、弊社でも障がい者カフェ運営のサポートができればと考えて、準備をしております。

最後に

障がい者雇用支援のサービスは、今後も話題になるかと存じます。 人権問題として、センセーショナルな話題として取り上げられやすいという性質もございます。 企業担当者様は、各種報道や発言等に怯える必要はございません。 国の方針を把握し、会社として全うに障がい者雇用を進めるだけで良いのです。 サービス利用をするにあたっては、サービス内容の吟味、運営の実態等をきちんと考慮した上で、会社にプラスになるかを考えて頂ければ良いでしょう。 日本国内の障がい者の数は、2018年の調査では、日本国内の7.4%の方が障がいを抱えているという結果が出ております。うち、65歳未満の障がい者の方は約450万人いるという結果が出ております。 今後障がいをお持ちの方の数は増えることが予想されます。また日本は少子高齢化に伴い、働き手や消費者となる若者は少なくなります。 そういった背景もあり、日本国は法定雇用率の上昇させることで、障がい者を人材として企業に迎え入れてほしいと考えていると推察されます。 目先の法定雇用率に追われる気持ちも重々承知しております。業務切り出し、凄く大変ですよね。 しかし、目先のことではなく5年後10年後の企業経営のことを考えて、適切な障がい者雇用のカタチを目指すことを求められる転換点に差し掛かっております。 是非一度、障がい者雇用に関して改めてお考え頂き、企業担当者としてどう向き合っていくか、ぜひ一度考えてみてください。 本件を踏まえ、障がい者雇用全般に関する事柄や弊社サービスに関して何かご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。