障害者の差別・合理的配慮に対して、採用担当ができる対策とは? | ESJコンサルティング

障害者の差別・合理的配慮に対して、採用担当ができる対策とは?

  1. 目次
  2. 1.そもそも何故このような調査が行われているのか
  3. 2.障害者雇用に関してのハローワークへの相談実績に関しての調査結果について(令和4年度)
  4. 障害者差別に関してのデータ
  5. 合理的配慮に関してのデータ
  6. 障害者からハロワに相談後に、法的問題はほぼ見つかっていない
  7. 3.障害者が”ハローワーク”に相談することは稀である
  8. 4.障害者差別や合理的配慮に関して、企業ができる対策について
  9. 障害者雇用支援関連のサービスや事業所を活用し採用活動を行う
  10. 求人媒体のみでの雇用なら、障害者雇用のノウハウのある担当者を配置すること
  11. 5.差別に該当すると考えられる例
  12. 6.合理的配慮の具体例
  13. 最後に

ESJメディアをご覧頂きありがとうございます。
代表の宇田川です。

本日は、障害者差別と合理的配慮に関して取り上げさせて頂きます。

令和4年度の「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績」が公開されました。
本件に関しては、企業が障がい者雇用を推進するにあたり直接的に重要なデータは公開されておりません。
しかし、本件が公開されている背景情報や、公開データから推察できる情報があります。

今回はこの調査結果から、障害者雇用における注意点を考察し、お伝えしたいと思います。

今回も貴社の障がい者雇用推進の判断材料としてご活用頂ければ幸いです。

本日もよろしくお願い致します。

1.そもそも何故このような調査が行われているのか

まず、なぜこのような調査が行われているのか、その背景としては、障害者差別解消法の制定が挙げられます。

この法律は、障害の有無に関わらず、全ての国民が人格と個性を尊重しあいながら共生する社会を目指すため、2016年4月1日に施行されました。

この法律は心身機能の障害に加え、社会的障壁により制限を受けているという障害の社会モデルの考えを取り入れています。

この考えのもと、企業が差別を行っていないか、合理的配慮を行っているかを調査する目的で本調査が行われています。また、2015年からは障害者差別禁止指針と合理的配慮指針が実施され、違反企業の確認を行う調査が実施されており、そのデータが公開されています。

2024年4月には改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者においても合理的配慮が法的義務化されます。この点については特に注意が必要です。

2.障害者雇用に関してのハローワークへの相談実績に関しての調査結果について(令和4年度)

障害者差別に関してのデータ

令和4年度のハロワークに寄せられた障害者差別および合理的配慮の提供に関する相談は225件であり、 うち障害者差別に関する相談は37件(対前年度比32.7%減)、 合理的配慮の提供に関する相談は188件(対前年度比0.5%減)でした。

 

障害者差別に関しの相談件数は、明確に減少しており、企業側が障害者に対しての配慮事項に関しての知見が増えていることが伺えます。

 

 

 

合理的配慮に関してのデータ

合理的配慮の提供に関する相談件数は横ばいとなっており、「思っていたことと違った」という雇用後のミスマッチは改善されていない状況のようです。
相談内容で多いのは、「上司・同僚の障害理解に関するもの」「業務内容・業務量に関するもの」「相談体制の整備、コミュニケーションに関するもの」です。

受け入れ態勢が整っていないが、採用は行っている企業も多いことも推察できます。

 

 

障害者からハロワに相談後に、法的問題はほぼ見つかっていない

ハローワークに相談あった後には、「相談のみで終了するケース」と「ハロワークが調査を行うケース」に分かれます。
約41%は「相談のみで終了するケース」となっており、残りが「ハロワークが調査を行うケース」となっています。
調停や違法が見つかる事は極めて稀であり、法違反は確認され無いケースが多いのが現状です。

実際に助言が行われたのは1件のみで、指導件数は0件となっています。

「相談のみで終了するケース」が41%であることからも、障がい者の方が思い込みをしてしまったか、または障害者の方に対しての説明が上手く伝わっていないことが推察できます。

 

 

 

3.障害者が”ハローワーク”に相談することは稀である

令和4年度のハローワークにおける障害者の就職件数が約10万件であることを踏まえると、相談に至ったのは約0.225%であることからも、障がい者の方が思い込みをしてしまったか、または説明が上手く伝わっていないことが推察できます。
自分からハローワークに出向き、「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談」を行う障害者の方は稀であるため、これをリスクとして捉える必要はあまりないと言えます。
しかし、今回の発表はあくまでハロワークへの相談を行った障害者を対象としているものです。
すなわち、このデータだけを見て、「障害者は差別されておらず、合理的配慮がされて安心して働いている」と判断することはできません。

少し話がそれますが、私の肌感覚やこれまでの経験上、「過去に雇用していた障害者の方と紛争になった経験がある」との話を聞くケースも多いため、公開データ以上に問題が発生していることが想定されます。

障害者の方が「差別されている!」「合理的配慮がされていない!」と感じた場合、どこにも相談せずに即紛争に持っていくパターンも想定されます。

 

4.障害者差別や合理的配慮に関して、企業ができる対策について

前振りが長くなりましたが、結論は障害者に特化した人材紹介サービスを利用している障害者の方や、就労移行支援所に通われている障害者の方の採用をご検討頂くのが、差別や合理的配慮への対策となります。

障害者雇用支援関連のサービスや事業所を活用し採用活動を行う

働く障害者の方が、採用後にも相談ができる場所を確保されているかの把握をしておきましょう。
障害者の方が外部にも相談できる環境があることは、採用後の安心感が違います。
人材紹介サービスや就労移行支援所であれば、ほとんどの場合就労後のサポートを受けられます。エージェントの場合、紹介した方が無事雇用された後にも定期的に連絡を行い、ご状況を伺いサポートされることも多いです。また、就労移行支援事業所であればほとんどの場合職場定着支援まで行ってくれます。

具体的な差別の例や合理的配慮の方法を具体的に提供してくれる事業先もあり、法律の変更や新しい調査結果の解釈についても最新の情報を提供してくれます。

弊社の障がい者雇用支援は、障害者の雇用についての情報提供を行っていますし、採用に関する具体的な相談にも対応しております。

もちろん、採用後にもがサポートをさせて頂き、採用担当者様からも働く障害者の方からも定期的にお話を聞き、雇用後に判明した不満点やミスマッチを解消するためのお手伝いをします。

障害者人材紹介サービス「グローエージェント」

私たちは、深く障害者の方とお話をする間柄になっているため、採用担当者様にお伝えしづらいことも私たちにはお話頂けるようになっています。そこでヒアリングをした内容を採用担当者様にお伝えして、互いに行き届かない部分に関してのフォローを行い、互いが安心しながら雇用関係を継続できる体制を整えております。

 

求人媒体のみでの雇用なら、障害者雇用のノウハウのある担当者を配置すること

ハロワークや求人媒体経由の採用をする場合、単純に求人票のキーワードマッチングされるだけです。

採用の判断材料が貴社の担当者様達の所感だけになるため、ミスマッチが起きる可能性が高まります。

採用担当者様が丁寧に雇用条件や職務に関して説明をし、障害者の方に理解してもらえるよう、より注意深く対応する必要があります。

そのためには、障害者雇用関連サービスを利用しない場合は、障害者雇用に関しての知見のある担当者を社内で用意頂く必要があります。

とはいえ、そうしても理解してもらえない可能性が高いのが、障がい者雇用です。
また、障害者雇用の知見のある担当者がそもそもいない、というのが企業の抱えるお悩みの大半となっております。
そのため、やはり何かしらの障害者雇用支援サービスを活用することが望ましいでしょう。

 

 

5.差別に該当すると考えられる例

差別に配当すると考えられる例をいくつか以下に記載致します。

適切に処理をしたにもかかわらず、後から差別であると指摘をされないためにもご注意ください。

・労働能力等に基づくことなく、単に障害者だからという理由で、特定の仕事を割り当てること。

・労働能力等に基づくことなく、単に障害者だからという理由で、障害者に対してのみ降格の対象とすること。

・労働能力等に基づくことなく、単に障害者だからという理由で、障害者だけを総合職から一般職に変更させること。

・労働能力等に基づくことなく、単に障害者だからという理由で、障害者だけを、フルタイムからパートタイムに変更させること。

・パートタイムからフルタイムへの変更の基準を満たす労働者の中から、障害者でない者を優先してその対象とすること。

・労働能力等に基づくことなく、単に障害者だからという理由で、障害者を優先して解雇の対象とすること。

・労働能力等に基づくことなく、単に障害者だからという理由で、障害者に対してのみ、労働契約を更新しないこと。

・労働契約の更新の際、障害者に対してのみ、一定以上の成績を上げていることを条件とすること。

・労働能力等に基づくことなく、障害者でない者を優先して労働契約更新の対象とすること。

 

 

6.合理的配慮の具体例

精神障害者の方に対しての合理的配慮の例を記載致します。
「できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること。」という記述もあるように、細かい部分の配慮が求められます。
後から「この企業は障害者への合理的配慮がされてないです!」と通報されないようにも、採用時には配慮してほしい事項については事前に確認しておきましょう。

【募集、及び採用時】

面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること。

【採用後】

・業務指導や相談に関し、担当者を定めること。
・業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。
・出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること。
・できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること。
・本人の状況を見ながら業務量等を調整すること。
・本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

 

 

最後に

「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績」の内容を元に、調査結果を踏まえて私の所感を述べさせていただきました。

私も「障害者ハラスメント」に関して相談を頂く機会多く、多くの企業が障害者の方の差別や合理的配慮に関してお悩みがあることを把握しておりました。

採用側が意識すべきことは意外と多く、抜け漏れがあることで問題が発生する場合もございます。本記事の内容が何かお役立て頂ければ幸いです。

引き続き、企業が障害者雇用を適切に進めるための情報提供を進めてまいります。

今回もお付き合いいただきありがとうございました。

引用元
第129回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33539.html
参考資料5:「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和4年度)」を公表します